新刊発売! 農が人を呼ぶ 場所「モナの丘」 六十五歳から実現した私の夢

六十五歳から農業を始め、相模原市に全国初の農業レストランを立ち上げるまでの物語

目次
第1章 子どもの時の経験を生かそう。
私の原点になった農家の暮らし
両親から受け継いだ精神
忘れられない食糧難の時代
生きるためのさまざまな工夫
家畜は貴重な栄養源
ヤギの乳で命が救われた
農作業で学費を稼いで進学
当時の経験がモナの丘立ち上げのきっかけに

第2章 原点の農業体験を生かし、また農業に戻るまで
大学のアルバイトで営業力を発揮
貧乏学生の学び
商売は信用が第一
苦労した経験は後で生きる
結婚して相模原へ移住
会社の勧めで独立
成功を左右した妻の協力
ついに自分の原点に返る
いくつでも挑戦できる

第3章 人の力で、人の集まる農園ができた
市長の夢と合致
信用を得て土地を広げる
みんなの力でつくられたモナの丘
ログハウスが取り壊しの危機に
レストランが全国の条例を変えた
産学連携で循環型農業を志す
失敗から学んだ堆肥の作り方
大学からの勧めでカレー屋をオープン
期待を裏切らないという気持ち

第4章 モナの丘の名産物
温暖化であきらめかけたにんにく栽培
炊飯器から作れる黒にんにく
堆肥で作る最高のネギ
サツマイモ栽培はおいしいシルクスイートに
桃の香りの新種イチゴ「桃薫」
大人気スイーツ店も太鼓判
貴重な天然はちみつ
稲作は協力し合って

第5章 あるものを生かし、受け入れる
食材を無駄にせず加工品にする
ラーメン屋にみんなで営業
ネギから始まったキムチ作り
いただいたアイデアはできるだけ形にする
賢い動物たち

第6章 農園を人々の憩いの場に
妻が主導したハーブガーデン
憩いの場所を妻が作ってくれた
人を集めるライブ
バーベキュー場を開拓
スタッフに伝わる思い

第7章 農業は五感塾
農業の深い役割
五感を育むさまざまな取り組み
サツマイモ掘り体験
都市型農業は専業には厳しい
地に足を付けて夢を見よう
地産地消が遠い夢になっている
都市型農業を救う試み
子どものための農業学校

〜はじめに〜

六十五歳の時に「モナの丘」を相模原市南区下溝に開設してから、もう二十年近く経ちます。
モナの丘は、誰でも利用できる農業体験型施設。
一万三千坪以上(約四万五千平方メートル)ある広い敷地で、一年を通してさまざまな野菜を栽培しています。
野菜作りでは「安全で体に良いものをみなさんに食べていただきたい」という思いから、農薬を極力減らし、肥料も自家製の堆肥を使っています。
園内は誰でも入れる農業公園になっていて、小さなバラ園やハーブ園では四季折々の花が楽しめます。
ヤギやニワトリもいて、餌をあげたり触れ合ったりすることもできます。
自然の中で子どもたちが虫取りに駆け巡る姿も見られるかもしれません。

また一年を通してサツマイモやイチゴなど、さまざまな野菜や果物の栽培や収穫体験ができ、幼稚園などの農業体験もよく行われています。
ほかにもハーブの加工品づくりやアロマセラピストによるハーブ講座、野菜ソムリエによる食育講座といったたくさんのイベントがあります。
敷地内にあるレストランでは、農園の風景を眺めながら、採れたての野菜やハーブを使った料理を食べることができます。
中でも漢方薬としても知られるスパイスをふんだんに使った本格的なインド・ネパールカレーは、「おいしくて食べると元気になれる」と評判です。
折々行われるバンドのライブでは、食事をしながら音楽を楽しむこともできます。

併設する農産物の直売所は「地産地消」がモットーで、園内で採れた野菜のほかに、近隣の農家さんの野菜や、農産物を使った加工品など、さまざまな商品を販売しています。
中でも園内の加工場で作られる「黒にんにく」は、免疫力を高めるものとして大変注目されています。
園内には木々に囲まれたバーベキュー施設もあり、自然の中で採れたての野菜を味わいながら、バーベキューを楽しむことができます。
環境に配慮した空間で、食と農に関してとにかくさまざまな体験ができる、そんな施設がモナの丘なのです。

なぜ私がこのような施設を作ったのかといえば、農業をとおして土に触れ、自然に触れることにより、できるだけたくさんの人に元気になってほしいからでした。
もともと私は農業を職業にしていたわけではありません。生まれ育った広島の実家は農家でしたが、大学進学で上京後そのまま東京で就職し、電機メーカーで営業の仕事に就きました。

その後、三十二歳で独立して相模原でガス会社を経営し、ずっと農業には携わることなく暮らしてきました。
しかしいつしか子どもの頃に慣れ親しんだ農業をやりたいという思いが強くなり、とうとう六十五歳で安定していた会社を引退。農業生産法人「グリーンピア相模原」を立ち上げてモナの丘の運営を始めたのです。

そのモナの丘も、今では地元の人たちに愛され、遠方からもたくさんの方が訪れる施設となり、願いがどんどん実現しているのを感じます。
新しい試みとしてやりたいこともまだまだたくさんあり、八十を過ぎた今も、毎日を夢いっぱいに過ごしています。
これまでの道のりは平坦ではなく、農業への新規参入も試行錯誤の連続でした。
無駄な経験は一つもないと思えるほど、多くのことを勉強させてもらいました。何より、今は亡き妻や二人の子どもたち、周囲の人たちからの助けがあったおかげで、ここまでやってくることができたと思います。
その誰一人欠けても今の私はありません。
実にたくさんの人に協力してもらいました。周囲の人に応援されるような生き方をするというのも、夢を実現するために大事なことなのかもしれません。
最近ではモナの丘の試みが世間から注目されるようになり、多くの方が「農業を始めたい」「定年後の人生を充実させたい」「どうしたら桑田さんのように事業ができるのか」とさまざまなアドバイスを求めて私のもとを訪れるようになりました。
そこで、私の経験や、モナの丘でのさまざまな試みができた経緯を紹介すれば、みなさんの参考になるのではないか、私が残せるものがあるのではないかと思い、本書をまとめることにいたしました。

戦後八十年近く経ち、戦争当時の生活を知る人も少なくなりました。
今となっては貴重な当時の経験も本書で振り返っています。
現代を生きる人たちが困難を乗り越えようとする時、当時の人間のたくましい生き様が励みになればと思っています。
人生は一度きりです。
みなさんが後悔のない生き方ができるよう心から願っています。  

著者紹介 
桑田 俊夫
1937年、広島県生まれ。大学を卒業後、八欧電機に入社。営業職を経て、1965年に独立し、プロパンガス会社を立ち上げる。また、同時期に神奈川県相模原市に居を移す。2002年にガス会社を廃業し、農業生産法人 株式会社グリーンピア相模原を立ち上げる。同年「モナの丘」を開業。2007年に敷地内にレストラン「モナ・サンサール」を開店。モナの丘の運営のほかに、地元の小中学校等に農業体験の場を提供するなど、人と農とのつながりを復活させるべく、その活躍の場を広げている。


単行本 A4 ソフトカバー 186ページ 

型番 Kー20230301
販売価格
1,500円(税込1,650円)
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